Cross talk

vol.03

  • 株式会社キュービック
    代表
    油井啓祐
  • ノットコーポレーション
    代表
    河内道生

今回の対談のお相手は、株式会社キュービック代表取締役の油井啓祐さんです。
カプセルホテルとマンションという建物の目的・形態の違いはあるものの、そのコンセプトやデザインの重要性、そして空間の持つ役割など、knot R責任者の河内と大いに語り合っていただきました。

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Profile

株式会社キュービック 代表取締役 油井啓祐

1970年、東京都生まれ。95年、関西学院大学商学部卒業後、日本最大のベンチャーキャピタル、株式会社ジャフコに入社し投資部に配属。99年、ジャフコを退社し株式会社キュービックに入社、代表取締役に就任。カプセルホテルの常識を打ち破ったまったく新しい宿泊の形「nine hours」の企画運営をはじめ、旧来型カプセルホテルの再生事業も精力的に手がける。

オリジナルとグローバルは、
ビジネスの必須要素。

河内

油井社長と知り合う以前から、私は「nine hours」に注目していました。何しろあれほど研ぎ澄まされたコンセプトとデザインを持つホテルは、他にはちょっとありませんから。著名なデザイナーの方を起用されているという部分にも、大変興味を持ちました。

油井

ありがとうございます。
おかげさまで「nine hours」は、2010年にグッドデザイン金賞をいただくことができました。

河内

その後、うちのスタッフが油井社長と知り合う機会を得たことがきっかけで、私自身も親しくさせていただいています。
まずは、油井社長がこの事業を始められたきっかけからお願いします。

油井

もともと、私は大学卒業後に投資会社に就職し、ベンチャー企業を支援する仕事に就いていました。
ところが社会人になって4年目に、秋葉原でカプセルホテルを経営していた父親が急逝。それまではまったく事業を継ぐ気もなく、そのうえ借金も相当額あったので、相続放棄をすることも考えました。しかし考えれば考えるほど、父親が築き上げてきたものをゼロすることは、私にはどうしてもできなかったのです。

河内

それで勤めていた投資会社をお辞めになって、秋葉原のカプセルホテル事業を受け継がれたということですね。

油井

そうです。実は日本でアップルやインテルに匹敵する会社を育てたかったのですが、なかなか可能性を持つ会社には巡り合えなかった。
同時に、もし自分でビジネスを始めるなら、次の二つの要素を満たす事業をやろうと考えていました。一つが「オリジナル」。誰にも似ていないこと、カテゴリーそのものを創ることです。二つめが「グローバル」。国境に関係なく、日本発のビジネスで世界のマーケットを目指せるものがやりたかった。

河内

確かにアップルやインテルは、その二つの要素を持っている会社です。
特に、アップルは「オリジナル」な面にしても「グローバル」な面にしても突出していますよね。

油井

それで私は秋葉原のカプセルホテルで、その二つを満たそうと始めたわけです。その時点では社会的信用もないので、まずは自分の店の再生を開始しました。
縮小傾向にあったマーケットの中で、秋葉原という土地柄、新たな客層として外国人客へのサービスを展開していき、その取り組みのプロセスをしっかりと体感することができました。

何より大切なのは、
事業をデザインすること。

河内

秋葉原での展開で、日本のカプセルホテルが世界に誇れるものであること、さらに世界にも輸出できるビジネスであることの確信を得られたということですね。
秋葉原では形態を変えずにやられていたのを、京都の「nine hours」では従来のカプセルホテルの概念を一新するデザインにしました。その理由は?

油井

「nine hours」は、どうしても建物や内部のデザインが注目されていますが、私としては事業そのものをデザインすることを重視しました。
「汗を洗い流し、快適な睡眠をとり、身支度を整える」というコンセプトに基づいた事業展開です。

この考えを徹底させていくことが最大の目的です。そのことをしっかりと理解し、具現化してくれる優秀なデザイナーにお任せする。だからこそ、造形的な部分だけではない、すべての面においてオリジナルなデザインが出来あがりました。

河内

なるほど、まったくそのとおりだと思います。
私もただ単にかっこいいデザインを創りたくてknot Rというブランドを立ち上げたわけではありません。

「どうすれば物件の収益力を高められるのか」ということに常にこだわり抜いた上で、knot Rならではの事業展開を行っています。例えば、ファミリー向けのマンションならこういう人にこそ住んでもらいたいという、居住者のイメージを具体的に描き、それをオーナーにプレゼンテーションしながら仕事を進めています。

油井

「nine hours」の場合は、それまでカプセルホテルの中心的な利用客層であった50歳代以上の男性ではなく、若者層、そして外国人客、さらには女性層までを含めた新たな客層へアプローチしました。
例えば、仕事帰りの既婚女性が今日は少し遅くなったときに泊まってもらえるような。「nine hours」なら女性一人でも安心ですし、そんな気軽な感覚のニーズにも対応すべきと考えました。

河内

現在、knot Rではマンションやビルに特化したリモデル事業を推進しています。
リモデルには「再生する」「再構築する」という意味があり、そこから「新しい価値を創出する」と定義しているので、カプセルホテルとマンションの違いはありますが、油井社長のお話を聞いていると、両社の目指すものは非常に近いということを強く感じます。

インフラがしっかりとしている物件を選ぶべき。

油井

いま私の会社では、旧来型のカプセルホテルの再生事業も行っています。河内社長にご紹介いただいた、大阪の心斎橋にある「A」がこの4月にリニューアルオープンしました。
ここは極限まで効率を追求した上で、必要なサービスを提供するもので、考え方は今話題のLCCとまったく同じです。就職活動中の学生や外国人バックパッカーを中心客層に据えています。こうした旧来型カプセルホテルの再生事業は、東京でも展開しており、新宿、神田なども含めて、年内に10店舗ほどオープンさせる予定です。

河内

最近、投資目的でマンションやアパートの一棟買いをする人たちが増えてきているようです。
油井社長は以前、投資会社で投資のプロとして仕事をされていましたが、そうした人たちへの何かアドバイスがあれば教えていただきたいのですが。

油井

私は不動産投資の専門家ではありませんが、自分がもしそういう立場になったらということでお答えさせていただきます。
まず投資というのは、一定のポジションを持っている人がポートフォリオをきちんと組んで行うからこそ成立するものです。
その上で話すと、やはりインフラがしっかりとしている物件を選ぶべきです。
購入後に大規模修繕などがかからない建物がいい。シードマネーは小さくて、所定の期間内に最もパフォーマンスが上がる投資がベスト。ですから、全体をしっかりと見て捉えることが大切だと思います。

河内

やはり、建物にとってインフラは重要ですよね。
私も、それらを含めたトータルな視点で検討していくことが必要だと考えています。最後になりますが、いま油井社長が関わっている再生カプセルホテルの建物の地下フロアが空いており、その企画を考えていらっしゃるとか。そこで何かコラボレーションができれば面白いですね。

油井

そうなんですよ。いま二案件あって、一つは外人客も多いのでキャッシュオンデリバリー式のバー、もう一つはライブハウスなどが運営できないかと思案中です。
何しろ店の客は上階に泊まっているので、効率はいい(笑)。期間限定でもいいので、集客促進につながるものを実現していきたい。
ぜひ、河内社長のアイデアもお借りできればと思っています。

取材協力:TOKYO OFFICE

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